クリスティーナはかなりきちんとした家庭で育ったお嬢さんだった。
だから家事も完璧にこなす能力がある。
・・・が能力が「ある」のと「使う」のには違いがあるもんだ。
まず彼女は食べるものを気にしない。
ほぼほぼコーンフレークと紅茶で生きている。
毎朝日の出前に「犬」と一緒に紅茶片手に散歩に行く。
帰ってくる時には行く時に持っていたカップはない。
家の中からカップがなくなると外にカップを回収しに行く。
わたしもよく回収しに行ったもんだ。
茂みの中やら土の中やらに埋まっているものもあった。
そして時々気が向いたように料理する。
料理は目分量のいい加減な作り方なのに美味しいから不思議なのだ。
彼女は掃除も嫌いだ。
子供の時、毎朝学校に行く前に家の掃除をする日課がトラウマなのだと本人は言う。
掃除はデッキブラシのみだ。
私は板の間をデッキブラシで掃除するのは初めてだしそれ以降もない。
掃除機はあるが壊れている。
もしかしたら・・・と思って1度使ってみたら掃除機が逆流した。
つまり吸い込まずに掃除機の中のものが出てくる仕様になっていた。
クリスティーナ曰く「壊れたから直したらヘソを曲げてそうなった」のだそうだ。
トイレブラシはいつもトイレにあるとは限らなかった。
「犬」の遊び道具だったからだ。
トイレブラシを目にする確率は階段が一番多い。
彼女はものをまっすぐに置くことを嫌がった。
なので部屋の家具は全て斜めに置かれていた。
壁にくっつけるのも嫌いなのだそうだ。
電気が明るいのも嫌いで、基本夜はろうそくを使っていた。
ただ彼女は持ち物のセンスがよかった。
一目惚れして買ったというランプシェードは実に見事で、私はそれ以上に素敵なランプシェードにまだ出会ったことがない。
彼女は洗濯機が好きだった。
だからいろんなものを洗濯していた。
スニーカーも洗濯機で洗っていたし、「犬」の寝床と玄関マットと自分の服もよく一緒に洗っていた。
アイルランドはカラッと晴れることは少なく、よく雨も降る。
降ると言ってもまとまって降らないで、微妙な降り方をすることが多い。
洗濯物は外に干すのだが、多少の雨では洗濯物を取り込んだりしない。
よって、2、3日外に干されたままの洗濯物があったりする。
天気は大抵曇り時々晴れ時々小雨
私は潔癖ではないが、綺麗好きな方ではある。
最初は「さてこの生活をどうしたものか・・・」と思ったが、意外にも大丈夫だった。
家の中で「牛糞せんべい」を見つけても平気だった。
「牛糞せんべい」というのは私が勝手にそう呼んでいるだけであるが、
そこらじゅう牛がいるので外から歩いて帰ってくると靴底に牛糞くんがくっついてくることがよくある。
そのまま家に入って乾いたら靴底から剥がれ落ちて「牛糞せんべい」が出来上がるのだ。
「なんて汚い話だ」と思われるだろうが・・・まぁ実際汚い話だが
意外に自分はそれも大丈夫なタイプだったということだ。
ただ自分の部屋は「動物を入れない」「毎日デッキブラシで掃除」「上履きに変える」を徹底した。
彼女はプライバシーを尊重することにおいては完璧だった。
ちょうど良い距離感を保ってくれる。
私がこの旅行を通して自分についてわかったことは
プライバシーさえ尊重してくれればあとは大して気にならない性格だったということだ。
それがわかったのは彼女のおかげだと思う。
と、なかなか規格外な彼女なので私にとってはびっくりすることが色々起こる。
それについてもぼちぼち書くとしよう。
次回は車の運転免許を取ることについて。