クリスティーナが借りていた一軒家はもともと牧場主の家だった。
牧場主が新しい家を建てて引っ越したため、とりあえず管理してくれる人を探していたところにクリスティーナがいたというわけ。
古い家で周りに何もない不便なこともあって家賃も格安なのだ。
着いた日の次の日、明るくなってから外を見た。
家の外観は白壁に赤い窓枠の可愛いお家だ。
間取りはこう。
台所はタイル張りの床、あとは全て板張りのステキレトロな佇まい。
どこの窓から外を見ても他の家が見えない。
バストイレにも大きな窓があり、用を足しながら窓の外を見ているとたまに牛と目が合う気がするくらいだ。
リビングとクリスティーナの部屋には年季の入ったおしゃれな薪ストーブも。
クリスティーナの部屋のストーブ
この出立が私は大のお気に入り
しかし滅多にいい仕事しない
その他の住居人はJeremiahという名前の犬とPiccadillyという名前の猫。
ちなみにイギリスでもアイルランドでも「猫は外で犬が家」が一般的。
Piccadillyは用があるときだけやってくる
台所の窓から訴えるのが彼女のやり方だ
Jeremiahという発音が私には難しく、何かしっくりこないため私は彼を「犬」と呼んでいた。
私たちは思いのほか仲良しになった。
ちなみにクリスティーナと「犬」の目は親子かと思うほどにそっくりだった。
好奇心と若干の狂気を含んだキラキラ光る大きな目は
開いているかどうかわからない私の目にはたいそう興味深く映ったもんだ。
クリス:「一応近所になんか売っているお店あるけど見に行く?」
私:「やったー」
「犬」と一緒に近所のお店まで歩く。
・・・二十分後に到着。
遠い。
店の中・・・多分10品くらいしかなかったと思う。
レジスターもあったが中はからだった。
まぁ「レジスターの中身は空」というお店は、ヨーロッパの田舎の小売店ではよくあることなのだということを後々知る。
ここでは犬の散歩はリードをつけないのが一般的だった。
「犬」もなかなか利口で飼い主の視界から外れることはしない。
・・・が羊がいるときだけは別。
人ん家の牧場でも羊が視界に入った途端飛んでいってしまう。
ちなみに「犬」の犬種はボーダーコリー。
やはり血が騒ぐのだろう。
私:「いいの?」
クリス:「だめなんだよ〜敷地内で射殺されても文句言えないからさ〜」
私:「紐つけなよ」
クリス:「かわいそうじゃん、自由がない生き方なんて」
「犬」と飼い主がそれで幸せなら私は何も言うまい。
ただ射殺現場を見るのは嫌なので、私がひとりで「犬」の散歩に行く時はリードをつけて散歩した。
散歩のしつけもクリスティーナに内緒でやったため、私と散歩するときだけ「犬」は若干お利口になった。
家の周りは半分が牧場に囲まれていた。
家の周りだけでなくその地域全体が牧場っぽかった。
近所の牛たち
好奇心旺盛なところが牛の可愛いところ
お店が遠いのことは確かに大変だが車もあるし大丈夫だろう。
車の免許取得についてはまた後々書くとする。
次回は家の中の話。
オランダ人の奥さんが心配していたのはこっちのことであったと知ることになる。