日本でのクレジットカード普及が今ほどまだ進んでいなかった頃のこと。
私の生活費はほぼ全てクレジットカードで賄われていた。
T/Cもそれなりの額で持っていっていたので、現金が必要な時はそれを使ったりクレジットの引き落としを使っていたが、ヨーロッパでは小さなお店でもクレジットが使えたりした。
アイルランドのATMは日本のような設置型ではなく、外壁の中に埋め込み式だ。
こういうタイプのATMです
設置型は重機とかで持っていかれたり、お金の入ったところを破壊されるからだ。
昨今ではその様子をお手軽にネットで見ることもできるので、「やっぱりね」という感じだが、当時の私にはショッキングな事実だった。
現金輸送の時は輸送車の周りに10人ほどの銃を持った屈強な男の人たちが囲みながら移動しているのをみてさらにびびった。
そういうところなので、個々の危機意識も高い。
以前ホームステイした家の人が更新して古くなったクレジットカードの捨て方を教えてくれた。
サインを油性ペンで真っ黒黒に塗り潰し、メッタメタに切り刻んで原型が何かがわからないようにして捨てるのだと。
新しいカードにはすぐにサインもする。
なるほど・・・。
逆に日本でレジ打ちのバイトをした時に、クレジットカードにサインをしていない人がたくさんいてそれはそれでびっくりしたし、それで通用してきたことにもさらにびっくりした。
ちなみに追記しておくと、この時代のクレジットカードにはまだICチップはついていなかった。
話はずれるが、サイン社会に馴染みのない私が経験した話をひとつ。
Morecambeにいた時の話。
Morecambeは日本人が来ることもない田舎町なのでそれなり冷ややかな差別を味わう機会があった。
近所には適度なものを購入できる小さなスーパーがあり、たびたび利用していたのだが、ある時若いレジ打ちのお姉さんからサインを求められたのだ。
レシートの下にではなく白いただの紙にだ。
そして私が書いたサインを見て、それから私のクレジットカードの裏のサインと照らし合わせ出す。
お姉さん:このカード本当にあなたの?
私:そうよ
お姉さん:なんかここの棒突き出していないんじゃない?盗んだカードなんでしょ?
と難癖をつけ出す。
私:このサイン何語で書いてあるかわかる?
お姉さん:日本語か中国語かなんかでしょ
私:私イギリス人に見えるの?
お姉さん:日本人か中国人でしょ?
私:じゃそのカード誰の?
と言ったらそれ以上は言わずに返してくれた。
その後家に帰ってすぐに自分のサインの練習をした。
それ以降、クレジットカードの後ろのサインはいつ書いても同じになるようにも気をつけている。
話を戻そう。
クレジットカードで現金を引き落とすのに苦労はなかった。
ATMはそこらじゅうのお店の外壁に埋まっているからだ。
ある時、現金を引き落とすため行きつけのスーパーのATMにカードを差し込んだ。
カードが吸い込まれた瞬間これはやばいATMだとすぐわかった。
野晒しで雨晒しになっているATMはメンテがきちんとされていないことが多く、よく故障する。
時々そういうATMにあたっちゃって、カードが吸い込まれなかったり、エラー表示になってお金が引き出せなかったり、カードを引き抜くのにかなり力が要ったりすることがある。
ただ今回のATMは今までで最悪の奴で、変な音を出して吸い込んでからエラー表示になりカードを吐き出してくれない野郎だった。
お店側としてはATMについて完全なる「It’s not my business.」の態度なのでATMの銀行へ行った。
私:あなたのとこのATMにカード吸い込まれて出てこないのですが
銀行:じゃ急いでカードを停止してください
私:取り出してください
銀行:無理です
というやりとりが続いただけだった。
埒が開かないので、仕方なくカードを解約することにした。
私はクレジットカードは1枚のみ持参だった。
残念ながら複数持っていくという頭がなかったのだ。
ついでにこのカード吸い込まれ事件の直後には友人たちとスペイン旅行へ行く予定であった。
代わりのクレジットカードは届くのだろうか・・・とカード会社に電話する。
会社:申し訳ありませんが、海外へのカードのご郵送はできません
私:ひぇぇ
叫んでたって仕方ないので、とりあえず実家へ郵送してもらう手続きをする。
それから実家からアイルランドまで郵送してもらう手筈にした。
幸い、スペイン旅行のための飛行機代、ホテル代は支払い済みだったので、当面必要になるお金はT/Cで賄うことにした。
アイルランドへ来て4ヶ月たっていた。
スペイン旅行からの話はまた次回。